テンプルハヤオは怠けたい

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12冊目 感想『革命前夜』 この国の人間関係は二つしかない。密告するか、しないか

12冊目は 『革命前夜』 著:須賀しのぶ

革命前夜 (文春文庫)

革命前夜 (文春文庫)

 

 

概要

時は冷戦、日本人のピアニスト眞山は自分の音を求め東ドイツへ音楽留学する。ベルリンの壁の向こう。教会で出会った美しいオルガニストに心惹かれるも、”こちら側”とは全く違う独特のルールと人間関係に翻弄されていく

 

読んでみて

オススメ度 ★★★★★ 

この本にはバッハを中心にたくさんのクラシック曲が登場する。

私は疎いので、場面場面でyoutubeで流しながら読んだが、これがまた新鮮で面白かった。お気に入りはBWV106


Lucas & Arthur Jussen – Bach: Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit, BWV 106: 2a (Transcr. Kurtág)

 

「価値観なんて、たった一日で簡単に反転する」

異才のヴァイオリニストが放つ一言。

これこそ柔軟性の極地。このマインドだと思った。

今まで積み上げたものを簡単に否定し、受け入れ糧とできる。

 

昨日の常識は今日の非常識

超スピード社会で生き残るための最強スキルは「常に自信を疑い、変化できる」だと心に刻みたい

 

焔を守れ。もし焔を守らねば、思いもよらぬうちに、いともたやすく風が灯を吹き消してしまおう。汝、憐れ極まる魂よ、痛苦に黙し、引き裂かれるがよい

 

東の人間は豊かな西への思いを抱きながらも、政府の目があるので公にはできない。あるものはそれを諦め、果てに密告者となる。夢や想いは消してはならない。

サン・テグジュペリの『人間の土地』最後の一文にも似たような表現があった。

 

結局僕らは、一人で勝つしかないんだ

東ドイツに音楽留学に来る人間は、人生がかかっている。音楽で成功できなければ軍に入れられたり、家族を養っていけなくなる。このハングリーさが日本人には圧倒的に足りない気がしてならない

 

戦わなくてはならない。それは分かっている。だが、逃げ続けた僕には戦い方が分からない

全力を賭して戦ったことがあるか?といわれると多分ない。まだ全力でぶつかるのを無意識に避けている気がする。心にグサリ

 

残るもの、国を去るもの

どちらが正しく、どちらが卑劣かということはない。それでもやはり、選択を突き付けられた時、誰もが苦しみ、もう一方の道を選んだものに複雑な思いを抱く。

昨今のSNSなどは、「自分と同じ考え以外は敵」という短絡的な風潮が強い気がする。最近はスマホ検索すれば、すぐに答え(らしきもの)をくれるので、自分の頭で考えることが少なくなっていることも原因かと。

どのみち、白黒の二元論は苦しむだけだ