13冊目 感想『考える脚』 ”すべてを想定内で終わらせたい”極地探検家の徹底した計画力
13冊目は『考える脚 北極探検家が考えるリスクとカネと歩くこと』 著:荻田泰永
概要
徒歩でソリを担ぐスタイルで極地を踏破する探検家。荻田氏の自伝
読んでみて オススメ度★★★★★
まず北極と南極へのイメージがガラッと変わった
本人曰く、南極は大陸だから歩けば必ず到着する退屈な出来レース。
対して北極は海流に氷が流されるため、歩けど歩けどゴールが遠ざかって行ったり、氷の裂け目(リード)の為に、数十Km迂回せざるを得なかったり。最悪の場合、突然足元で氷が裂け、北極海に飲み込まれる可能性もある。
その辺のリアルな体験談だけでも一読の価値がある。
ただこの本はそれだけで終わらない。
「すべてを想定内で終わらせたい」
極地探検には常に命の危険が伴う。このリスクとどう向き合い、論理的に攻略していくかといった戦術はまさに”プロフェッショナル”。この徹底的な事前分析と計画が他の探検家と一線を画す部分だと思う。
「俺は今、危険な考え方をしているんじゃないだろうか」
さらに著者は極限状態で、自分の思考を俯瞰するスキルも並外れている。
北極では「どうやって達成するか」しか考えられなくなり、アクセルを踏むしかない暴走車のようだという。マイナス20度の世界を歩きながら時々、彼は自問する。「視野が狭くなっていないか」と。悩んだ末の最終的な判断基準はここでも”計画”であり、計画から大きく外れた時点で、想定外=危険な状況だから退く。といった具合に自身を制している。
さらに、「無理に歩を進めて成功したとしても、実力での成功とはいえない。ただ運が良かっただけ」と、熟練したトレーダーのような境地に達しているのは驚きだ
応援してくれる人がいる。それが見えないプレッシャーとなり、退くに退けなくなって一か八かの賭けにでて命を落とした探検家は多いと筆者は語る。
私たちの日常でもお金、人情は視界を曇らせる。
「視野が狭くなっていないか、心は平常か」、今一度立ち止まって考えるきっかけをこの本はくれるだろう。